Close Up Development(トートバッグ&シューズ編)

  寸法のばらつきを徹底的に少なくして、精度の高い左右対称性を実現したい。
  経年劣化による機能の低下を可能な限り少なくして製品の耐久性能を高めたい。

  私たちは、今回リリースするADVANトートバッグ、ADVANシューズの製作に入る
  前に、今まで以上に高いハードルを設定しました。

  このコーナーでは開発秘話やその歩みを振り返ります。

 
 
  Made in Japan

 
 

  「ADVAN STYLISH COLLECTION」は、高い技術と厳しい品質管理体制を備えた生産拠点であれば、生産国にこだわりはありません。 
  
事実生産国は多岐にわたっています。中には、優れた技術を持ったパートナーも出てきておりADVAN STYLISH COLLECTION」を
   支えてくれています。 しかし、何回試作を重ねても、私たちが要求する品質を実現できない製品が存在することも事実です。

  ”日本はモノつくりで追いつかれた。他国の技術と日本の技術は大差ない” 本当でしょうか?

  私たちは、カバンからTシャツに至るまでさまざまな製品を手がけていますが、モノつくりに欠かせない目配り、気配り、心配りに
  関しては、日本の職人を超える職人はこの地球上に存在しないとすら感じています。マイスターという熟練工の資格制度を持つ
  ドイツの製造業も高いモノつくりを実現していますが、気配りや心配りといった面では日本の職人の域に達することは難しいという
  のがモノつくりの世界では一般的な認識です。

  それは、国民性の違いに起因しているのかもしれません。契約社会である欧米は、製造指示書以外のことを製作サイドで手を加える
  ことは極めて少ないですし、アジアの国々では、クライアントが要求する品質以上の提案を製作サイドから行うことは稀です。

  ”基本デザインをすこし変えてくれればもっと機能が向上する。”
  ”コストがかかっても、時間がかかってもこうしたほうがもっとよくなる。”

  私たちは、これを「親切なおせっかい」と呼んでいます。日本の職人には、このおせっかいが本当に多い。図面に指示された内容を
  そのままカタチにすれば仕事として終わりとは絶対に考えない。納品までの最後の最後の瞬間まで改善案を積極的に提案していく。

  私たちは今回の開発で「親切なおせっかい」を何度も経験しました。仕様変更を繰り返し、試行錯誤して創りあげたトートバッグと
  シューズ。本当に良いモノができた。心の底からそう感じています。

  ”Made in Japan”とはそういうものなのかもしれません。

  ADVANシューズ 「靴のカタチ」
  足の形は、エジプト型・ギリシャ型・スクエア型など類型があり、お客様の履いている
  靴によってストレスのかかり方に特徴がでます。日本人に多いのは、ギリシャ型と
  スクエア型で、先の細い靴をはくと、つま先が痛くなるのは、この足型のせいもあります。

  つま先がシャープな靴は、スタイリッシュな印象を与え、デザイン性に優れるのですが、
  長時間履き続けるとストレスを与えてしまいます。

  足型を徹底的に研究した結果、日本人にはつま先に余裕のあるセミラウンドトウ形状
  の靴が快適と判断しました。普段履きができて、いざとなったらドライビングシューズの
  領域までカバーできる最適形状。この形状はデザイン性を兼ね備えつつ、快適性も
  1mmたりとも譲らないベストな形状であると私たちは考えています。

  ADVANシューズ 「製法へのこだわり」
 
 
  靴の製法はウエルト製法やマッケイ製法などが有名です。これらの製法は、耐久性に優れ、型崩れしにくいという利点はあるものの、
  「甲革=アッパー」と「靴底=ソール」を糸で固定していますので、糸の縫い目から水が沁み込んでしまうといった弱点があります。
  従ってスポーツシューズに採択されることは滅多にありません。
スポーツシューズは、軽快感や、生産性を重視し、アッパーとソール
  の接合を接着剤で接着しプレスするセメント製法が一般的です。

  セメント製法は接着剤で固定される為、糸の縫い目がなく耐浸水性には優れるといった利点があります。反面、アッパーとソールを
  糸で固定していませんので耐久性に劣り、靴底が剥離してしまうといった弱点があります。

  私たちは、この課題をクリアすべく、セメントでアッパーとソールを接着する製法ではなく、インジェクション製法を採択しました。

  インジェクション製法とは、アッパーに底金型をセットし、液状の合成樹脂を金型に入れ、加熱接着しながら同時に本底を成型する
  製法です。この製法は、ソールとアッパーの結合が強く、底はがれの心配が少ないことに加え、接着と成型を同時に行うため無理が
  なく形くずれが少ないといった利点があります。すなわちウエルト製法などの利点である耐久性・耐型崩れ性と、セメント製法の利点
  である耐浸水性を同時に備える製法ということになります。

  この製法は、金型の精度、加熱時間のコントロール、成型後の処理に関するノウハウが高度なため、私たちはパートナーを日本に
  求めました。

  さまざまな天候下において、快適を約束するADVANシューズは、日本の高度なインジェクション製法によって支えられているのです。

  ADVANシューズ 「素材へのこだわり」
 
    
  私たちは、アッパーの素材に本革を採択しました。合成皮革ではなく、本物の「革」を
  採択したのは理由があります。

  最近の合成皮革は、見栄えといった面では、本革と見分けができないレベルにまで
  進化しています。クロコダイル調、オーストリッチ調などバリエーション豊かな表面
  加工も可能です。しかしながら合成皮革は通気性の面では、本革の持つ機能レベル
  まで到達できていないのです。

  通気性は、繊維の持つ細かさによって影響を受けます。繊維が細ければ細いほど
  通気性は上がります。本革の繊維の細さを1とした場合、人間が作り出す繊維の
  最小値は1000を超えてしまうのです。今回ADVANシューズに採択した革は生後
  6ヶ月以内の仔牛の皮です。きめが細かく肌触りが良い最高の皮を丁寧な「鞣し
  (なめし)」加工で革にしています。

  私たちが追求した素材の快適性をぜひ体感して欲しい。追求した吸湿性、排湿性は
  きっと体感できると信じています。 


  ADVANトートバッグ 「デザインについて」
 
    
  大きなものをザクザク放り込める。これがトートバッグの醍醐味です。
  しかし、その目的からカタチがどうしてもカジュアルな印象になることは否めず、
  使うシーンを限定してしまうのが従来のトートバッグでした。カジュアルでありつつも、
  ビジネスシーンで違和感ないように仕上げるにはどうすればいいのか?

  
私たちは、この課題に対してビジュアルを構成する要素を徹底的に見つめなおす
  作業を行いました。

  先ずはデザインの根源を成すプリミティブなラインを精査し、それに続く平面の
  シェイプ、そしてシェイプを立体にしたフォルムをあらゆる角度から検証し、ADVAN
  にベストな組み合わせを探っていきました。

  そして、基本的なフォルムが固まった後に、手触りを含めた素材の質感にこだわり、
  テクスチャを決定。その後、規則性を伴った連続性のある模様をパターンとして定め、
  最後にベースのナイロン素材のカラーと、革のカラーの整合を取っていったのです。

  この作業により、ビジネスシーンでも十分通用するデザインを実現できる確信が持
  てるようになりました。導き出した理想のフォルムは、従来のトートバッグとは縦横
  比率やマチの幅が大きく異なっているかもしれません。

  しかし、カジュアルでありつつもフォーマルな印象を与えるには、このフォルムが
  最適だと私たちは判断したのです。


  ADVANトートバッグ 「親切なおせっかい」
  
  金属やプラスチックなどの変形が少ない素材ならば、ミリ単位での寸法コントロールが可能ですが、ナイロンや革などの柔らかい
  素材はそれぞれの伸張率が異なるので、各パーツを縫合したときに微妙な差異が生まれます。水平のラインが歪んでしまったり、
  ステッチが蛇行したりするのはこのためです。

  型紙に描き込まれた無数の指定数値。この数値が今回の開発がいかに難しかったかを物語っています。

  何度も何度もサンプルを作りこみながら現物合わせで私たちが理想と定めたフォルムに追い込んでいく。一見効率が悪いように
  思いますが、鞄の製作では、2次元の図面と立体のイメージが乖離しないためには避けては通れない工程なのです。

  経験豊富な職人が、勘を働かせ、理想的な構造提案しながら各パーツとの整合を丁寧に纏め上げた結果、ようやく私たちの理想
  のフォルムが実現する運びとなりました。茨城の鞄工場の職人たちの矜持と匠の技がなかったらとても実現などできなかった。
  これが偽らざる心境です。「親切なおせっかい」によって当初思い描いていたデザインから大きく軌道修正しましたが、結果として
  最高のモノができたと自負しています。

  欧米のモジュラー型モノつくりと比較すると、効率が悪いと言われていますが、一品一様のオリジナルデザインを実現するため
  にも、私たちはこのインテグラル型の魂を込める日本式モノつくりが永遠に続くことを願っています。

  最後に

   
  今回トートバッグに用いた持ち手のベルト素材は、車のシートベルトに使われている素材と同じものです。引っぱり強度や耐久性の
  面では現存する素材の中では最強です。軽量で肩にしなやかにフィットする追従性も良好で、製品のストレス低減に大きく貢献して
  います 。私たちは、この他にも、機能性の向上を狙い、鋲や固定治具もオリジナルで開発しています。

  いつまでも長く愛される製品をみなさまに届けたい。そのような真摯な気持ちでこれからも開発を続けて参りますのでご愛顧のほど
  宜しくお願い致します。

  開発スタッフ一同
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