昨年チェコのブルノにおいて、およそ20年ぶりの4輪世界選手権レースとして開催されたFIA世界ツーリングカー選手権(WTCC)。
今年もブルノはWTCCの熱い戦いの舞台となったが、時期的には昨年よりもおよそ3ヶ月早いタイミングでの開催となった。
　
ブルノは全長5kmを超えるサーキットコース。コース幅が広く中・高速コーナーが連続するレイアウトは、前戦がフランス・ポーでの市街地レースだっただけに、ガラリと戦いの様相を変えることになった。
　

17日のお昼12時05分、第1レース(シリーズ第9戦)がローリングスタートで幕を開ける。ポールポジションはBMWのF.ポルテイロ選手、以下A.プリオール選手、A.ザナルディ選手とBMWがトップ3を前日の予選で独占していた。

スタートすると初めてのポールポジションスタートを切ったポルテイロ選手が快調に1コーナーを駆け抜けていく。
しかし、その後方ではA.プリオール選手が第1コーナーでセアトのP-Y.コルタル選手と接触してコースオフ、グラベルの餌食となって早々に戦線から離脱。
また、別の場所でもクラッシュが発生、レースは序盤からセーフティカーが導入される展開に。

この後は比較的上位グループは大人しい展開に変わり、ポールスタートのポルテイロ選手が一度もトップの座を明け渡すことなくフィニッシュ。
また7周目にはポルテイロ選手と同じBMWチームイタリア・スペインのA.ザナルディ選手が3番手に浮上して表彰台を獲得、チームにとっての喜びも倍の結果となった。
更に2位はJ.ミューラー選手、4位にもA.ファルファス選手が入り、実に上位4台をBMW勢が独占した。
　
　
15時35分、第2レース(シリーズ第10戦)が今度はスタンディングスタートで行われる。
第1レースの結果を反映したグリッドはポールポジションがシボレーのA.メニュ選手、セアトのG.タルクィーニ選手が続き、3番手グリッドはシボレーのN.ラリーニ選手。第1レースを6位で終えたセアトのY.ミューラー選手はミッショントラブルにより第2レースには不出走となった。
　
ロケットスタートを決めて1周目からポジションを上げてきたのはBMW勢。24台のマシンが再びホームストレートに戻ってきたとき、トップのA.メニュ選手と2番手のG.タルクィーニ選手は変わらなかったものの、その直後にはA.ザナルディ選手、A.ファルファス選手、そしてJ.ミューラー選手と続いていた。
　
2周目にはA.ザナルディがA.メニュ選手のドライビングミスをついて前に出ようとするが、接触がありザナルディ選手も挙動を乱してしまい、その間にG.タルクィーニ選手以下A.ファルファス選手とJ.ミューラー選手も先行してトップ3を形成。

3周目には激しいプッシュを繰り広げていたBMW勢の2台がG.タルクィーニ選手をとらえてパス。
そしてここから更にWTCCらしいバトルが展開され、4周目には2台のBMWがサイド・バイ・サイドのトップ争いを見せる。
これを制したのはJ.ミューラー選手、トップに立つと残るラップをしっかりと走りきって開幕第1戦のクリティバ以来となる今季2勝目を飾った。
また2位はA.ファルファス選手、3位は第1レースを制したポルテイロ選手が再び表彰台を飾り、第1レースに続いてBMW勢が表彰台を独占して圧勝を飾った。

1983年8月26日、スペイン生まれ。
14歳の時にスペインジュニアカート選手権で2位を獲得、3年後の2000年には同シリーズでチャンピオンに輝く。
'01年、ヨーロッパカート選手権とともに、スペインF3選手権に参戦。
翌'02年からはワールドシリーズ・バイ・ニッサンを3シーズン戦い、'05年にはワールドシリーズ・バイ・ルノーに参戦。
そして'06年にGP2へとステップアップを果たしたフォーミュラ畑出身の若きドライバーである。
'07年より初のツーリングカーレース挑戦として、WTCCにBMWチームイタリア・スペインから参戦を開始した。

1962年3月2日、イタリア生まれ。
カートレースを経て1985年からFIA F3000選手権に3シーズン参戦。
'87年からはF1にステップアップ、資金面や体制的に決して充分とは言えない中での参戦となったが、最上位で6位入賞という戦績を残す。
F1を離れてからはツーリングカーレースに転向。
'94年、イギリスツーリングカー選手権でアルファロメオを駆って8勝を挙げ、シリーズチャンピオンを獲得。
この後もヨーロッパのツーリングカーレースで活躍、2003年にはヨーロッパツーリングカー選手権(ETCC)で再びアルファロメオとともにシリーズを制した。
WTCCには発足した'05年より参戦。同年はアルファロメオ、'06年からはセアトのステアリングを握っている。

ブルノ・サーキット(チェコ)
　
チェコ共和国第2の都市ブルノは繊維産業などを中心とした工業都市として栄えてきた街。
同時に芸術的な分野でも幾多の才能ある者たちが集まり、現代においてもこの街を拠点として歌劇団やフィルハーモーニー管弦楽団が世界的な活動を見せている。
そんなブルノのサーキットは、長くモトGPの開催などにより二輪レースのメッカとして知られてきた。
もちろん四輪レースも行われてきたが、世界選手権は1987年を最後に実に19年間開催されることはなかった。
そして2006年からWTCCの開催地に加えられたブルノ。全長5,403mというロングコースは幅員も広くアップダウンもあるコース。中・高速コーナーが連続するハイスピードコースである。