アラン・メニュ選手とトム・コロネル選手が、それぞれに優勝を飾った「FIA WTCC
Race of JAPAN」から二週間。WTCC初開催となった鈴鹿サーキット・東コースでの熱戦、その興奮もさめやらぬうちにWTCCは次なる戦いのステージを迎えることになる。

シーズン終盤のカレンダーはアジアでの3大会、その第2弾となるが中国の上海天馬サーキットを舞台に開催される第21戦&第22戦だ。モータリゼーションの発展が目ざましい勢いで進んでいる中国。ここにWTCCは本土初上陸を果たす、記念すべき大会が幕を開けようとしている。
鈴鹿に続いて初開催となるコース、短い時間でマシンのセットアップを詰め、ドライバーはコース攻略法を見いだす必要がある。チームの総合力が試される機会となるが、ここでちょっと興味深いデータをご紹介しよう。
WTCCは2005年に、10大会・全20戦のカレンダーで発足。翌年にはADVANがワンメイクコントロールタイヤの指定を受けたことはご承知の通りである。ここで注目したいのは、果たして初開催となるコースで強さを見せているのは誰なのか、という点である。
そこで、発足2年目となる2006年以降で、カレンダーに新たに加えられた初開催コースでの大会における戦績を振り返ってみた。前年までのカレンダーに掲載されたことがなく新規開催となった大会は、先の鈴鹿までで15大会・30戦になる。このうち、実に6勝を飾っているのが、鈴鹿でも表彰台の真ん中に立ったシボレーのアラン・メニュ選手なのである。これに続くのは4勝を挙げているイヴァン・ミューラー選手。ただしメニュ選手は前モデルであるラセッティを駆っていた時代から勝ち星を重ねてきたのに対して、ミューラー選手はセアト時代には1勝に留まり、残る3勝は全て今年になって獲得したものである。
そして3番目に多いのはガブリエレ・タルクィーニ選手とロブ・ハフ選手で、ともに3勝。ハフ選手についても2006年と2007年のラセッティ時代にそれぞれ1勝を飾っている。

このことから見えてくるのは、まずドライバーとしてのアラン・メニュ選手の初開催コースに対する強さ。そしてチームとしてのシボレーも同様に、初開催コースを得意としていることは間違いの無いところだ。
メニュ選手はWTCC発足初年度からシボレー一筋、1963年生まれのベテランは、BTCCで長く活躍を見せて2回のチャンピオンにも輝いた戦績の持ち主。ルックスからも生真面目さが伺えるところだが、ずば抜けた一発の速さこそ目立たないものの、総合力に長けたドライバーという評価を受けている。だからこそ、誰もデータを持ち合わせていない初開催コースにおいて、短い時間で攻略法やマシンのセットアップを見いだすことで勝り、これが多くの勝利に結びついたと言えるだろう。
なお、現地時間の4日(金)14時(日本時間で4日・15時)からはテストセッションが行われ、WTCCマシンが初めて上海天馬サーキットを走行した。曇り空ながら路面コンディションはドライ、中盤での赤旗中断をはさんで合計30分間のセッションでトップタイムをマークしたのはアラン・メニュ選手。序盤に1分06秒台前半に入れてトップに立ったが、これを逆転してきたボルボのロバート・ダールグレン選手やBMWのコリン・タルキントン選手らと、05秒台を睨んだタイムアタック合戦を展開。
後半、一旦はピットで待機していたメニュ選手は、チェッカー間際に再びコースインしてフルアタックを敢行、参加全車の中で唯一となる05秒台に叩き込んで1分05秒978をマーク、やはり初開催コースでの強さを見せる結果となった。