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HOME / MOTORSPORTS / ADVAN FAN / Vol.95 News Index
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世界最高峰のツーリングカーレース・WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)を筆頭に、国内外のレースシーンで高いパフォーマンスが認められているADVANレーシングタイヤ。
生まれながらにして"勝つ"ことを宿命とされているレーシングタイヤは、多くの人々によって戦いの最前線へと送り出され、そして戦いで栄冠を手にしてその生涯の幕を閉じます。

ADVANレーシングタイヤ、その生涯と、そこに携わる人々の思いをご紹介していくストーリー。
第一弾は「生産編」、ADVANレーシングタイヤを産み出している横浜ゴムの三島工場を舞台に、タイヤが生産される過程と、横浜ゴムスタッフの思いをお届けします。
 
 
 
ADVANレーシングタイヤが産声をあげるのは、横浜ゴムの三島工場。ここで、世界各地で活躍するADVANのレーシングタイヤは産み出されています。
レーシングタイヤは、タイヤ開発エンジニアから「仕様書」にその内容がまとめられて工場に伝えられます。工場ではこの「仕様書」に従って生産にかかりますが、その生産工程は熟練した技術が求められます。

このコーナーでは三島工場から製造1課 レース工程 職長の小池信幸、製造1課 レース工程 作業長の加藤浩、技術課 マイスターの小沢則夫、タイヤ開発セクションからはモータースポーツ部 技術開発1グループの石黒禎之が、タイヤの開発から製造に関する舞台裏をご紹介いたします。

−レーシングタイヤに使われる原料というのは、だいたいどれぐらいあるのですか?

三島工場 技術課 マイスター・小沢則夫
小沢則夫(三島工場 技術課 マイスター、以下・小沢) :
カテゴリーによっても違いますが、コンパウンドの中に10種類ぐらい、全部で20種類ぐらいでしょうか。一般車と比べても格段に多いですよ。
特に、カーボンブラックとオイルは入っている量も多いです。カーボンブラックはタイヤの強度が増しますし、オイルはグリップが良くなりますから。


−レーシングタイヤと一般車用タイヤは作るときの注意点に違いはありますか?

加藤浩(三島工場 製造課 レース工程 作業長、以下・加藤) :
基本的には同じですね。レーシングタイヤは一般車用タイヤに比べ貼りつけるものがたくさんあるのですが、その間隔が大きすぎたらダメだとか、そういった部分には気をつけています。
レーシングタイヤはほとんど人の手で張り付け作業を行っているので、非常に気を使います。


三島工場 製造課 レース工程 作業長・加藤浩
−手作業となると、やはり高い技術が必要となりますよね?

加藤 :
そうですね。気を使いながらじゃないと、タイヤは作れないです。


−実際にレースを見に行くことはありますか?

加藤 :
2007年にマカオに行かせてもらって、F3とWTCCを見ましたね。

小池信幸(三島工場 製造1課 レース工程 職長、以下・小池) :
タイヤには、製造年月と誰が成形をしたのかが分かるようになっているんですが、今年の開幕戦(SUPER GT鈴鹿ラウンド)でGT500が優勝した時には、モータースポーツ部から誰の作ったタイヤかを知らせてもらいました。
自分の作ったタイヤが勝つと、やはりモチベーションが上がりますね。


−ワンメイク用と、複数のメーカーで争っているコンペティション用のタイヤ、作るときに違いはあるのでしょうか?

小沢 :
作ることに関しては、どちらも全く一緒ですよ。部材をまっすぐにはるというのが基本。タイヤの仕様によってはカーカスの角度がきつかったりするので、そうなると合わせにくかったりはしますが、補強の部分をぶれないように貼るというのはワンメイクレースでもSUPER GTでも一緒です。
ただ、作業者の気持ちは少し違うかもしれませんね。ワンメイクは、今作っているタイヤがどこで結果を出すのかわからないっていうのがあるけれど、SUPER GTについては『これは次の鈴鹿レースで走るタイヤなんだ』と。それですぐに結果が出て、そういう部分は結構ドキドキしますよ。


−ちなみにSUPER GT第6戦・鈴鹿ラウンド用のタイヤは、いつ頃作り始めたのでしょうか?

三島工場 製造1課 レース工程 職長・小池信幸
小池 :
8月に入ってすぐぐらいですね。SUGOのレースが終わってすぐに仕様書が届き、様々なオーダーを出して、GT300から作り始めました。


−鈴鹿700kmレースに向けて、何かいつもとは違うタイヤの特徴というのはありますか?

石黒禎之(モータースポーツ部 技術開発1グループ、以下・石黒) :
いつもより距離が長いから、というタイヤの仕様書は作っていません。ただ、普段の300kmレースに比べ、ロングスティントやショートスティントを取り入れようとする、様々な作戦を描くチームが考えていますので、そのどれにでも対応できるようなタイヤを準備しています。


−仕様書を作る際に一番考えることは?

モータースポーツ部 技術開発1G・石黒禎之
石黒 :
我々のタイヤを使用していただく各チームの皆さんが、楽しくレースができてなおかつ結果に結び付くようなものを提供する、ということです。そういうタイヤが、作りやすくて工程も少なければ生産サイドにとってもいいのかなと思いますが、一番に考えるのは『勝てるタイヤにすること』ですね。

加藤 :
確かに工場としては効率よく作れることも望んでいますが、やはり製造現場として『いいものを作ろう』という思いはあります。
いろんな仕様書が送られてきますし、中には一目見て『うわぁ、大変だ』と思うものもありますけど、それは勝つために届いたオーダー。そういう思いで今はみんなやっています。

石黒 :
GT300について言えば、仕様の統一化は考えていますね。すべて違う仕様だと生産側もすごく大変でしょうから、なるべく種類を少なくできればと考えることはあります。

小沢 :
たしかに車種ごとに違う仕様があると大変ですけれど、いま自分の作っているタイヤがどのマシンにつけられるのか分かって、楽しいでしょうね。

小池 :
そうですね。基本的にここはレーシングチームではなくタイヤ工場ですから、あまりレースに興味のない作業員もいれば、熱狂的にレースが好きな作業員もいます。
人それぞれですが、やはり優勝という結果につながればさらに勝ってほしいと思うし、モチベーションも上がってきます。
GT300はそれが分からないので、全車の結果を気にしてしまいますね。
 
 
−タイヤづくりにおいて苦労するのはどんなことでしょうか?

加藤 :
先ほども言ったように人が手をかける部分が多いので神経を使いますね。さらに僕は作業長という立場にあるので、作業員の安全面にも気を配っています。


−たとえばGT500のタイヤを作れるようになるには、新人からどれぐらいかかるものでしょうか?

小池 :
一般車用タイヤの製造ラインでは、新人が入ってきてから2週間ほどで現場投入しています。レースラインでは1ヵ月半ぐらいでしょうか。作るスピードが遅いか早いかで、3〜4カ月かかる作業員もいます。
ただ、レーシングタイヤを作るには五感を使う部分がたくさんあるので、レース用タイヤの中でもGTのラインにはまだ入れない、ということもあります。補強する部材も他のレースに比べて多いですし、それを貼るスキルも必要とされますから、基本的には1年ぐらいかかるんじゃないでしょうか。

小沢 :
一般ラインと違って、仕様書の指示通りに作っても上手くいかないことがあります。仕様書ではじき出された数字と合わなかったり、タイヤが膨らんで変形してしまったり。もちろん作業者のスキルによって上手くいかないこともあるので、経験を持ったものがそれぞれ入念に作業チェックはしています。それでもやっぱり実際に作ってみないと分からないこともあるので、こちらから開発部門へ意見を送ることもあります。
仕様に要因のある故障品というのももちろん出てきますよ。ゴムを練る時点で、混ぜるものが原因で練りにくかったり、固くなってしまったり。そういう情報はライン全体で展開し、なるべく故障品が少なくなるような努力をしています。


−最後に、タイヤを作る現場の皆さんから一言メッセージを。

ADVANレーシングタイヤを生産する三島工場
加藤 :
僕はこちらの工場に来て初めの頃まではレースには全く興味がなかったのですが、自分たちの作ったタイヤが勝ったというニュースを聞いていると、だんだん面白く感じるようになってきました。それはきっとみんな同じだろうし、だからこそやっぱりこれからもどんどん勝ってほしいです。

小池 :
そうですね。主力のレースには、2戦でも3戦でも、1つでも多く勝ってほしいです。現場に一番伝わるのは、やっぱりこれですから。
勝ってくれるなら、我々生産側はどんな要求でも応えられるよう頑張りますよ。

小沢 :
やっぱり勝てるタイヤを作りたいですよね。
同じ仕様書をもらっても、作り方によってタイヤは変わってきます。丁寧に作ることや、作業者のノウハウで、タイヤ設計者の意図がタイヤに入っていく。そうすると勝てるタイヤになるわけです。
実際に勝つのは時の運だけれど、目標としていたタイヤを作りあげる、そういうことを目指して頑張っていきたいですね。
 
 
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