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ヨコハマタイヤとシビック
シビックレースをはじめとする、ホンダのワンメイクレースを支え続けている無限(株式会社M-TEC)。車両開発からパーツ供給、さらにパーツサービスやホスピタリティテント運営まで、きめ細かくエントラントをサポートしてきた。
そのスタッフの中で、ホンダのワンメイクレースに関わったことがあるなら知らぬ人はいない、まさに「顔」と言うべき存在が、モータースポーツ部の安井一秀さんと矢崎潔さんだ。長年に渡って携わってきたレースに対する、思い出やエピソード、苦労話について語っていただいた。
「僕が最初に関わったのはEF3型(グランド・シビック)が始まったぐらいなので、1988年あたりからですね。最初のうちはグループAやF1もやらされていて(笑)。そこからシビックレースのメンテナンス講習会とか、レーシングスクールも担当していました。
このスクールがすごくてね、先導車両と一緒に走っているうちに、みんな熱くなっちゃって、講師のインを刺しちゃって接触した参加者がいたんですよ。そのぐらい、あの頃は熱かったし、強烈な個性の持ち主が多かったですからね」と、当時を懐かしがるのは安井さん。レーシングスクールからしてこうなのだから、レースそのものも、いかに火花が散っていたか容易に想像がつこうというものだ。

ドライバーもそうなら、チームもそう。
「トラックの中見ると、サーキット別のエキゾーストがあったりして(笑)。ボディは1年ごとに入れ替えるわ、すごい時代でした」と安井さんは言う。
ただ、エンジン排気量が1,600ccのシビック時代は、近年当たり前のように行われているパーツサービスは、ほとんど行っていなかったそうだ。なぜならこの頃のシビックレースは、パーツに規制がなく自由な選択が許されたためだ。さらに景気の良かった時代だけに、それぞれのチームがパーツを豊富にストックしていたという背景もある。

さらに面白いことに、その時代の恩恵は今現在にもあるという。EG6型(スポーツ・シビック)やEK9型(ミラクル・シビック)がローカルレースで未だ現役なのは、この頃のパーツの吟味や徹底的にセットアップされて、レーシングカーとして完璧な状態とされたからなのだろう。ともあれ、最近のレース事情を知らない往年のシビック使いが、20年経った今でもEG6型が現役のマシンで、今や入門にも適していると聞いたら、驚かれるのではないだろうか。
「サービスを本格的に始めたのは、インテグラに改まってからですね」と語るのは矢崎さん。
その理由のひとつに「ベルノエキサイティングカップという冠名称がついて、販売会社の社長さんなどがプレゼンターとして会場に来られるので、ホスピタリティを作らなくては、というのがあったのです」と言うが、実際にはもっと切実な理由があったそうだ。安井さんが続ける。

「インテグラに変わって、全部がガラッと、タイヤも16インチから17インチに変わったとか、全然違うものになってしまったでしょう。だから、スペアパーツを持っていってあげれば負担も減りますよね、というのが表向きだったんですけれど……。
実はインテグラでワンメイクレースを始める前の年に、十勝24時間レースに参戦したのですが、開発にものすごく苦労したのです。エンジンは次々に壊れるし、サスペンションは厄介な形状で。

そんなわけでワンメイクレースは我々が相当サポートしないと走れないかも、ということになりまして。実際にシリーズが始まってからも、いくつかのトラブルが出ました。だから、ブリーフィングで『すいません。走らない、止まらない、曲がらないクルマです。皆さん、ここを十分気をつけてください、こういうトラブルが起きていますから。対策部品も持ってきていますから、変えてください』なんて言ったことを今でも覚えていますよ(苦笑)」

「売ったもの全部回収して、交換したパーツもありましたね」(矢崎さん)

「山のようにあったね、倉庫に回収したのが。その当時、うちにホンダを卒業した顧問の方がいて、昔のN360と同じようなサスペンション形式だと。『これはダメだって、禁じ手にしたはずなのに』って。笑うに笑えなかったですね」(安井さん)

今でもインテグラはローカルレースで用いられ、またスーパー耐久でも未だ一線級の戦闘力を誇る。もはや壊れやすいという印象はまったくないだけに、いかに無限の対策が短期間に、適正に行われたかが分かるというものだ。
そういった反省もあって、FD2型シビックが投入される際には、綿密な先行開発が行われたという。

「シビックでまたそんなふうになったらいけないということで、発売前にマレーシアのセパンサーキットに行って、相当な距離を走っているんです。その時にタイヤはヨコハマタイヤさんしか開示ができないということになって、ヨコハマさんでスタートして。
インテグラの最後2年も、シーズンごとメーカーを変えてタイヤをワンメイクにしていたのですが、FD2型シビックではヨコハマさんのワンメイクにしたのは、そういう理由によるんですよ」と安井さん。そうした信頼関係は、今日まで続いてきた。


話をFD2シビックの開発に戻そう。やはり入念にテストが行われたことで、大きなトラブルには遭遇せずに済んだという。
ただし、「サスペンションのセッティングには、皆さん苦労していたようですね」と安井さん。特にリアのレイアウトに余裕がなかったのが理由だったというが、それもまた無限の対策とチームの努力によって解消されていった。

「AT型(ワンダー・シビック)こそ、トーションバーで特殊でしたけど、EF3型からウィッシュボーンになってサスペンションがすごく良くなったんですね。本当にそれ以降のシビックはコーナリングマシンでした。エンジンだってすごく良かったと思いますが、今だったら考えられない、お金のかかったサスペンションでしたから。
素性が良かったから、それに助けられて、どんどんエントラントが増えていったんでしょうね」と安井さんは語る。


さて、残念ながらシビックレースはこれまでに紹介したとおり、2013年を限りに終了し、幕を閉じることとなった。だが、ホンダのワンメイクレースはスタイルを変えて継続される。
そのひとつが軽自動車のN-ONEによるナンバーつきレース、「N-ONE OWNER’S CUP」で、鈴鹿、富士、岡山、もてぎ、SUGO、オートポリスを舞台に全8戦を開催。パドルシフトつきのCVTミッションを装着するが、「かえってハンドルとアクセル、ブレーキだけに集中できるので、物足りなさを感じることはない」と、すでに行われたデモラン参加者は語っている。
そして、もうひとつは発表されたばかりのフィットでの展開。鈴鹿クラブマンレースに「フィット1.5チャレンジカップ」が第3戦から新設される他、ワンメイクレースではないが、もてぎチャンピオンカップの「1.5チャレンジカップ」にも、無限はパーツの供給、サポートを行っていく。なお、今年はSUGOでのレースも加え、全6戦で争われる予定だ。

これからもホンダのワンメイクレースから、目が離せそうもない。
[UPDATE : 7.Mar.2014]
             
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