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WTCC Race of JAPAN 記者発表会を開催! WTCCの魅力と面白さの理由を検証! 3人の日本人選手がWTCC岡山に参戦!
ADVANエンジニアと織戸選手が語る! ドライバーを知ればWTCCはより面白い! 岡山からの直前情報&周辺観光ガイド!
2005年に発足したWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。2006年からはADVANがワンメイクタイヤサプライヤーの指定を受け、この世界最高峰のツーリングカーバトルを足元から支えています。
WTCC用レーシングタイヤの開発については、昨年このページの特集企画でそのストーリーをお伝えしましたが、日本で2年目の開催となる「FIA WTCC Race of JAPAN」を控えて、再びADVANの開発エンジニアがWTCCへの思いやタイヤ開発の今を語ります。
また、昨年WTCCに参戦して日本人として初めてポイントを獲得した織戸学選手も交え、ドライバーの視点から見たWTCCの魅力やレーシングタイヤのポテンシャルについて語っていただきました。
【LINK >> 世界最高峰のバトルを支えるADVANの"匠" (2008年2月掲載)】
2006年からワンメイクサプライヤーとしてレーシングタイヤをWTCCに供給しているADVAN。WTCC用タイヤは横浜ゴム・モータースポーツ部に設けられた専属部隊"Wプロジェクト"のエンジニアが中心となって開発を進めていますが、供給開始に向けての開発では"産みの苦しみ"も数多くありました。

その詳細は昨年2月に掲載した特集企画「世界最高峰のバトルを支えるADVANの"匠"」で紹介しましたが、プロジェクトのリーダーをつとめる渡辺晋エンジニアはWTCCのタイヤ開発のこれまでについて、改めて次のように振り返ります。

 
「開発当初は思っていた以上にWTCCがタイヤに対してシビアなレースであったことから、とても苦労した部分がありました。
しかし徹底したテストを重ね、翌年からの供給開始を控えて2005年の秋くらいから一時期は30人以上がプロジェクトチームを組んで対応しました。その結果、2006年シーズン開幕前のオフの間、約3ヶ月でおよそ3年分くらいの進歩を遂げて、満足出来るタイヤの供給をスタートさせることが出来ました。」

2006年の開幕戦からWTCCの戦いを支えているADVAN。ラップタイムも安定しており、2005年に使われていた他メーカーのタイヤを超えるパフォーマンスを有していることを、参加チームもオーガナイザーも認めるに至りました。

 
横浜ゴム株式会社 モータースポーツ部
Wプロジェクト・リーダー  渡辺 晋
「タイヤの性能については充分に満足していただけ、ドライバーやチームのエンジニア、主催するオーガナイザーからも高い評価をいただいています。
そこで次の段階としては品質の安定とサービス体制やデリバリーの面を強化していきました。世界各地を転戦するWTCCですが、確実にタイヤを毎回サーキットに届けるという作業は、実はとても難しいものなのです。」

タイヤそのものという"ハード面"はもちろん、本当の意味でレースを足元から支えるためには、安定供給という"ソフト面"もとても重要なポイント。この点、日本国内はもとより、世界各国のモータースポーツシーンで活躍してきたADVANは、蓄積されたノウハウを活かしてWTCCという世界選手権でもオフィシャルタイヤサプライヤーに相応しいサポート体制を構築しています。
この夏、ADVANは2012年シリーズまで引き続きWTCCのオフィシャルタイヤサプライヤーをつとめることが正式に決定しました。
実は昨年掲載した特集でも触れられていますが、WTCCのタイヤは基本的に2006年の供給開始時から仕様の変更はなされていません。唯一、ウェットタイヤについてのみ若干のサイズ拡大が行なわれただけなのです。
これはWTCCというレースが参戦経費を抑制することを重視している現れ。もしも頻繁にタイヤの仕様が変わると、チームはそれにマシンを合わせるためにテストを重ねたり、場合によってはマシンの仕様を変更する必要に迫られるからなのです。
こうしたことによるコストアップを避けるための策なのですが、逆に言えば世界選手権を戦う上で高い性能を有しているタイヤでなければ、2006年から今年まで3シーズンを戦い抜くことは出来なかったでしょう。

ADVANにとっては"WTCC・第二期"ともいえる2010年から2012年までの3シーズンですが、このタイミングでWTCCのタイヤはひとつ大きな進化を遂げることになりました。
横浜ゴム・モータースポーツ部Wプロジェクトの小林勇一エンジニアが、その"進化"について説明します。

 
「2010年からは、環境性能を従来よりも向上させたものをWTCCに供給します。
FIA(世界自動車連盟)では"MAKE CARS GREEN"という環境啓蒙活動を展開していますし、WTCCでは今季からバイオフューエルを用いるなど環境への配慮が重視されています。
そこでタイヤとしてもゴムに配合するオイルを環境性能の高いものに切り替えます。
しかしFIAからは環境を性能を高めた上でタイヤそのものの性能は従来と同じものにすることを求められています。これは、性能が大きく変わると、チームがマシンを合わせるためにテストや仕様変更をする必要があり、参戦コストアップにつながってしまうからです。」

 
横浜ゴム株式会社 モータースポーツ部
Wプロジェクト  小林 勇一
世界選手権を戦うチームはタイヤに対する眼もシビアなものを持っています。環境性能の向上は、決してタイヤの性能変化を万一生んだ場合でも言い訳にはなり得ません。
WTCCに参戦するチームのタイヤに対する厳しさについて、小林エンジニアはひとつのエピソードを紹介しました。


「WTCCのタイヤには車種の違いによる差を無くすことと、品質の安定が強く求められています。
特に品質にはシビアで、供給を開始した頃はチームがタイヤの重さを1本ずつ計っていて、『今回のタイヤは前回のものと50g重さが違う!』なんて言われたこともありました。
もちろん品質的に問題があるわけではなく生産公差の範囲内なのですが、ここまでやるのかと驚きましたね(笑)。」

 
さすがに安定供給の実績を重ねた今ではこのような事は無いというが、これもWTCCという世界選手権が如何に高いレベルで競い合っているレースなのかを象徴しているエピソードだと言えるでしょう。
小林エンジニアが語ったエピソードにもそのレベルの高さが伺える世界最高峰のツーリングカーレース・WTCC。
昨年、イタリア(モンツァ)、日本(岡山)、そしてマカオと参戦して、マカオでは日本人として初めてポイントを獲得した織戸学選手は、WTCCというレースをどのように見ているのでしょうか。

 
「練習走行から決勝まで限られた時間の中でとてもシビアな戦いが繰り広げられています。特に昨年の岡山はWTCC初開催でしたが、短い時間でタイムをしっかり出してくるセットアップ能力の高さを持ったドライバーが揃っていることを実感しました。
一言で現すならば『世界の猛者(もさ)が集まっている』のがWTCC。
僕は3レース出て悔しい思いもしましたが、貴重な経験になりましたね。」

 
昨年、シボレーラセッティを駆って3レースに参戦した織戸選手ですが、ワンメイク供給されているWTCC向けのADVANレーシングタイヤには、どのような印象を抱いたのでしょうか。
 
「ADVANレーシングタイヤはレースを始めてからずっと使ってきて、WTCCでも思った通りの性能やキャラクターでした。僕としては何も考えなくて良く、これまでと同じ感覚でレースを戦えたのです。
改めて特徴を言えば、他のカテゴリー向けのタイヤとも共通していますが、とにかく懐が深いタイヤ。僕が乗ったシボレーラセッティという車には少しクセがありましたが、タイヤについては全くクセがありませんでした。」

 
生粋の"ADVAN使い"とも言える織戸選手も、改めて太鼓判を押すWTCC向けのADVANレーシングタイヤ。
渡辺、小林の両エンジニアを前に、このタイヤを開発することの難しさを織戸選手はこう推察します。

 
「WTCCは一年を通じて世界各国で開催されます。それこそ暑い場所も寒い場所もあります。
その上でエンジニアのお二人も話されたように、たった一種類の仕様で対応しなければならない。
これはとても大変なことで、極端に言えば路面温度で0度近くから60度くらいまでの広い領域をカバーするタイヤを作らなければならないのです。
例えばSUPER GTでは、時期やコースに応じて細かく仕様を変えるものですが、それが出来ないWTCCのタイヤを作るということはとても高い技術が無ければ出来ないことだと思います。」
 
どんなレースであっても、優れたマシンであっても、ドライバーが信頼出来るタイヤが無ければ1周たりとも満足に走ることは出来ないと言えるでしょう。
世界各地でサーキットに足を運んだファンを、そして世界中でテレビを通じて観戦している多くの人々を熱狂させるエキサイティングなバトルが繰り広げられるWTCC。
それは、全てのドライバーが全幅の信頼を寄せることが出来るADVANレーシングタイヤがの存在を抜きには成り立たないのです。
現在、WTCCにはBMW、セアト、シボレー、ラーダの4メーカーがマニュファクチャラーとして参戦しています。孤高のFR(後輪駆動)であるBMW、ディーゼルターボパワーが炸裂しているセアト、今季からニューモデルを投入したシボレー、そしてマニュファクチャラーとして本格参戦を果たしたラーダ。
個性的な顔ぶれが揃っていますが、タイヤエンジニアの目線からはどのような車に見えるのでしょう。
小林エンジニアにまずは聞いてみましょう。


「タイヤエンジニアの立場で言えば、まずシリーズリーダーに立っているディフェンディングチャンピオンのセアト。マニュファクチャラー勢はディーゼルターボエンジン車で参戦していますが、この車はフロントヘビーなFF(前輪駆動)車なので、特にタイヤにとっては摩耗の面で厳しいものがあります。
しかし、この点についてはチーム側でも対策を講じており、セットアップでカバーしています。この対応ぶりはさすが"ワークス・チーム"だと感心させられました。」

 
渡辺エンジニアは今年から登場した2台のニューマシンについて、その印象を次のように述べました。
 
「シボレーはクルーズになって少し"大人しく"なったという印象があります。それまでのラセッティではリアのキャンバー角がいわゆる"鬼キャン"のように凄くつけられていたのですが、クルーズではそこまでではなくなりましたね。
もう一台、ラーダのプリオラについては、ラーダ自身が今年からのマニュファクチャラー参戦ということもあり、まだ良く分からないというのが正直なところです。見ている限りパワー的にライバルよりも苦しいようですが、イタリアでは初めてポイントを獲得しましたから、これからが楽しみですね。」

 
個性豊かな車種同士のバトルもWTCCの大きな魅力。
それぞれの持ち味を引き出し、各車にとって均等に高いパフォーマンスを発揮出来るタイヤをADVANが供給しているからこそ、世界各国で車種間バトルも大いに盛り上がっています。
昨年に引き続いて来る11月1日に日本で決勝が行なわれるWTCC。
岡山国際サーキットがその舞台となりますが、昨年初めて岡山でWTCCを戦うことになったドライバー達は"意外な行動"をしていたと織戸選手がウラ話を披露してくれました。

「岡山にやってきて、レースウィークにコースを下見する時間が設けられました。
特に岡山を走ったことの無い選手たちは念入りに徒歩や自転車などでコースを見に行ったのですが、見ているポイントが僕たちと全然違うんです。
普通なら路面の状態とかカント(傾斜)なんかを見るのですが、彼らは路面を見ずに縁石の外側やランオフエリアなんかを入念に下見しているんです。
これは、縁石をどこまでまたいで攻められるかや、コースからはみ出してもどこなら支障なくレースに復帰しているかをシミュレーションしているんでしょうね。
多少の接触やコースオフが当たり前のWTCCらしい光景なんでしょう(笑)。」

 
このエピソード、実は今となってはドライバーに限った話では無いようで、小林エンジニアが続けます。

「最近では私たちタイヤエンジニアもコースを下見するときには縁石の裏側を見たりしています。
コース幅いっぱい以上に走るWTCCの場合、縁石の"向こう側"まで使うのは当たり前。しかし場所によっては縁石のコース側はなだらかな形をしていても、ランオフ側はストンと切り立っている場合もあります。
こうした場所はタイヤにダメージを与える可能性も高いので、事前にチェックしているんです。そうすればレース後に万一タイヤにダメージがあったチームから『どうなっているんだ!』と言われても、『あそこの縁石をまたぎましたよね?』と説明出来ますからね(笑)。」

 
日本国内のレースにおける"常識"は通用しないWTCC。
織戸選手は昨年初めてWTCCに参戦したイタリア・モンツァでの経験談を披露してくれました。

 
「モンツァのコースでは縁石に乗るとタイヤや足回りにトラブルを受けそうな感じがしていました。
『そんなに縁石を使って大丈夫なんだろうか?』と思っていたのですが、みんなが行くから自分も思い切って攻めこんでいったら大丈夫でした(笑)。」

 
"WTCC流儀"を肌で感じたという織戸選手。
しかしこうしたアグレッシブな走りも、頻繁に起こる接触も、決して単なるラフプレーではありません。
攻められるところで極限まで攻めこむ。
一方で守るべきところはしっかり守る。
このメリハリある戦い方が、結果としてWTCCらしい超接近戦を生み出し、激しいバトルの応酬へとつながっているのです。
最後にいよいよ本番までカウントダウンが始まった2009年のWTCC日本ラウンド「FIA WTCC Race of JAPAN」。この日本ラウンド、そしてWTCCの見どころと魅力についてお聞きしてみましょう。

まずは小林エンジニアから。

「WTCCはFIA世界選手権の中では参戦する側としても良い意味で敷居が比較的低いレースです。今後はもっと多くの自動車メーカーにマニュファクチャラーとして参加してほしいですね。
観る側にとっては、本当に単純に見ていて楽しめるレース。
ぜひ岡山国際サーキットに多くの方に足を運んでいただきたいですし、サーキットにお越しになれば充分に世界トップのツーリングカーバトルを満喫していただけると思っています。」

 
続いて渡辺エンジニア。

「昨年の岡山は生憎のコンディションでしたが、トム・コロネル選手がフロントにスリックタイヤ、リアにレインタイヤを装着するという作戦を成功させて優勝しました。あの時はスタート前に『あっちのチームはどう、こっちのチームはこう』とタイヤ選択の情報などが私たちADVANのスタッフが使っている無線でひっきりなしに飛び交っていました。
あのような戦略もWTCCならではの醍醐味ですが、やはり観戦に来られる皆さんには今年は晴天の下でドライコンディションのレースを楽しんでいただければと思います。」

 
最後に織戸選手は、岡山で"バトルの真髄"を見てほしいと語りました。
 
「岡山のコースはオーバーテイクポイントが実は多くて、タイミングさえ合えばどこでも抜くチャンスがあります。
しかし自分の経験で言えば中段以降のグリッドに陣取るような選手の中には少し"勘違い"をしている人もいるようで、時に無謀な走りをすることもあるのです。だから、特に今回初めて参戦する荒聖治選手や谷口信輝選手には、こうした"勘違いドライバー"の餌食にならないように気をつけてほしいですね。
もちろん上位のドライバーたちはそんな無茶をするはずもなく、"押し出す"ようなことなしなくて、あくまでも"接触しながら曲がって"いきます。これが世界トップレベルのツーリングカー・バトル。
WTCCはこれからもますます盛り上がっていくこと間違いなしのカテゴリーですから、ぜひSUPER GTやスーパー耐久とは違う迫力あるスプリント・バトルを多くの方に見ていただきたいですね。」

 
ADVANとともに歩み、ともに発展を続けるWTCC。
岡山国際サーキットでの開催を控えて日増しに日本でも話題が盛り上がりつつある世界最高峰のツーリングカーレースをお見逃しなく!
 
 
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