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[vol.1] WTCCの魅力を再検証! [vol.2] 谷口選手&新井選手に聞く [vol.3] 世界の走りを支えるADVAN
[vol.4] 2011年のWTCCと有力選手 [vol.5] 鈴鹿の見どころ、私のお薦め [vol.6] 現地から最新情報をお届け!
2006年、シリーズ発足の翌年からオフィシャルタイヤサプライヤーとして、WTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)にコントロールタイヤを供給している横浜ゴム。世界選手権という最高峰のモータースポーツシーンを戦うに相応しい性能を持つADVANレーシングタイヤは、世界トップレベルのドライバーやチームから厚い信頼を寄せられ、他に類のない激しいバトルを足元から支え続けている。
そんなADVANレーシングタイヤは日本で開発から生産までが行われており、「WTCC Race of JAPAN」はまさしく故郷での凱旋レースとなる。

横浜ゴムでWTCCを支える立場にあるスタッフの中から、企画部門の関口和義、開発部門の渡辺晋と丹羽正和の3人が、鈴鹿・東を舞台に開催される日本ラウンドを前にしてWTCCの魅力を語る。
2005年に、それまでのETCC(ヨーロッパ・ツーリングカー・選手権)を発展させるかたちで、当時としては3番目のFIA世界選手権タイトルを冠されたシリーズとして発足したのがWTCC(FIA世界ツーリングカー選手権)。

発足初年度はETCC時代の流れを受けて他社製のタイヤによるワンメイクとなっていたが、WTCCが本格的な発展の第一歩を踏み出した2006年からは、横浜ゴムのADVANレーシングタイヤがワンメイクコントロールタイヤの指名を受け、これまでオーガナイザーなどと一緒にWTCCを支え続けてきている。

横浜ゴム・PC製品企画部 モータースポーツグループのリーダーをつとめる関口和義。今年の春から現職にあるが、以前はドイツのデュッセルドルフに駐在しており、WTCCがADVANのワンメイクとなる経緯に深く携わった一人だ。

「私はドイツに5年ほど駐在しており、その時にWTCCと出会いました。ワンメイクタイヤの指定を受ける段階でも深く関わっており、今年は日本を代表する鈴鹿サーキットでWTCCが開催されることを、とても楽しみにしています」

関口は日本で過去3回行われた岡山国際サーキットでの日本ラウンドももちろん全て現場を訪れているが、鈴鹿での日本ラウンドに向けて参戦する日本人ドライバーにこうエールを贈った。

「日本でWTCCは、4年前に岡山へと初上陸を果たし、3年間に渡って開催されました。しかし残念ながら毎回雨のレースとなってしまっています。今年は鈴鹿に場所を移しますが、開催時期は同じようなタイミングなので雨の可能性も否定は出来ません。しかし今回新たに参戦が決まった新井敏弘選手はラリーの世界チャンピオンですから、雨が降っている方が面白い戦いぶりを見せてくれるのかな、と思っています。
また、谷口行規選手は日本ラウンドへの出場も今年で3回目。昨年の岡山はYOKOHAMAインディペンデントトロフィーで優勝されていますし、鈴鹿はホームコースということなので、楽しみにしています」


やはり鈴鹿ラウンドでまず注目すべきポイントとなるのは、日本人の"SAMURAIドライバー"たち。
WTCC日本ラウンドは関口の言葉にもあるように、残念ながらこれまでドライコンディションでのレースが一度も実現していない。今年こそは、という思いを強くしているWTCCファンも多いことだろうが、天候やコンディションを問わず、常にホットな戦いが繰り広げられることもWTCCの大きな魅力のひとつだ。
2006年からADVANのワンメイクとなったWTCC。それに先立って横浜ゴムでは、この世界最高峰のツーリングカーレースに専用タイヤを開発・供給するにあたって、"Wプロジェクト"を立ち上げた。この"W"にはいろいろな意味が込められているが、もちろんそのひとつが"WTCC"の"W"である。

このプロジェクトで発足から今日までリーダーをつとめているのが渡辺晋。モータースポーツタイヤの開発に長く携わってきており、世界各国のモータースポーツシーンを知るエンジニアの一人である。

「私は"Wプロジェクト"の中で、基本的な技術対応と、弊社の現場における責任者としてWTCCに携わっています。
WTCCのタイヤについてご説明すると、今年は何が変わっているのかということ、申し訳ないのですが何も変わっていません(笑)。スリックタイヤ1仕様とウェットタイヤ1仕様で、全てのレース、全てのサーキットを戦っています」


WTCCのタイヤはこれまでに2006年のADVANワンメイク化以降、実は大きな変化は受けていない。唯一、2007年にウェットタイヤがコンパウンドや構造の大きな見直しを受けているが、スリックタイヤは5年以上に渡って基本的にはそのままなのである。
これはWTCCのオーガナイザー側からの要望でもあり、頻繁なタイヤの仕様変更はテスト回数の増加やチームのセットアップを難しくするといった、参戦コストアップにつながる要素となる。そこで優れた性能のタイヤであれば仕様をひとつに固定することで、コストダウン効果を狙っているのだ。

もちろん駆動方式がバラバラの多彩な車種が登場し、かつ世界中を転戦して中高速からテクニカルなコース、さらにはストリートバトルまでを戦うのだから、タイヤに求められる事柄も多い。

「気温で言えばさすがにマイナスにはならないものの、路面温度で低い方は8度、最高では50度くらいまでの違いが、世界を転戦していると幅として生じてきます。この幅広いレンジを同じタイヤでカバーしなければならないので、コンパウンドや構造の詰めはしっかり行いました。
またFF(前輪駆動)、FR(後輪駆動)の両方で均等に優れたパフォーマンスを発揮できることも、開発上の重要なポイントでした」


こうして生み出されたWTCC用のADVANレーシングタイヤ。先にスリックについては大きな仕様変更はこれまでに受けていないと記したが、唯一2010年に環境対応としてオレンジオイルを採用している。1980年代後半からレーシングタイヤの材料として採用されてきているオレンジオイルは、オレンジの皮から抽出したオイルを石油系オイルに換えて採用しているものだ。

「オレンジオイルは天然系素材ということで、ゴムのポリマーとの馴染みが良くて、石油系のオイルから置換するとタイヤのダンピング特性が向上します。つまり路面の凹凸への追従性が向上するので、グリップがあがるということなんですね。
色々な性能を図で示す、いわゆるレーダーチャートで見ると、グリップという項目の性能がアップするので、その上がり幅を抑えて代わりにハード系のコンパウンドを持ってくると耐久性能の向上に振れたりもするわけです。
こうしてWTCCのタイヤについては1つの良い材料が見つかったので、それをベースにチューニングして望む特性のところを向上させる、という開発手法を採用しました」
今年からWTCCの担当となったエンジニアが、MST開発部 技術開発2グループの丹羽正和。スーパー耐久などにも携わり、それ以前には全日本ジムカーナ選手権を担当してADVAN A050を生み出したエンジニアだ。

「WTCCの担当になって現場に行ってみて思ったことは、これが"世界"なんだな、ということ。やはりトップレベルのチームは、本当にプロフェッショナルですね。
そんな中でWTCCを担当することになったのですが、基本的にはタイヤの開発というのはWTCC用でもADVAN A050でも同じだと思うんです。細かい味付けをどうするかでレース用になったりコンフォートタイヤになったりするわけですが、WTCCの場合はやはり駆動方式を問わず高いポテンシャルを発揮することと、激しいレースですからタイヤのトラブルが起こらない耐久性が求められますね」


渡辺と丹羽、ふたりのエンジニアは、日本で最もWTCCを知り尽くしているふたりだと言えるだろう。そんな両エンジニアは、鈴鹿・東コースへと舞台を移す今年の「WTCC Race of JAPAN」がどのような展開になると予想しているのだろうか。

まずは渡辺が、タイヤマネージメントの重要性が勝負を分ける鍵になると語った。

「鈴鹿・東でのWTCCを予想してみると、タイヤについては摩耗的に厳しい戦いになりそうですね。実際にはプラクティスを各車が走ってみなければ状況はわかりませんが、特にFFのフロントタイヤは厳しいかもしれません。状況によってはスタートから勢い良く飛び出したFF車が、終盤でタイムダウンするようなことになるかもしれませんから、各チームのタイヤマネージメントは見どころのひとつでしょうね」

一方の丹羽は、東コースとという新たな戦いの舞台がWTCCドライバーを刺激するのではないかと予想。

「鈴鹿の東コースはパッシングポイントが限られる、という見方もあるようですが、抜きにくいところでもガンガン抜いていくのがWTCCというレース。特に2コーナーから先のS字区間では激しいバトルになるのではないでしょうか。
個別の選手やチームで言えば、シボレーの圧倒的な速さが目立つ一方で、ロバート・ダールグレン選手の駆るボルボ・C30が着実に速さを増してきています。日本でも親しみのある車種ですし、注目株になりそうですね」


シリーズとして今季のWTCCを見た場合、やはり既にマニュファクチャラーズタイトルを確定させているシボレーの強さが目立った展開となっていることは間違いない。そんな中で渡辺は将来に向けた注目ポイントがあると語る。

「ワークスが今年は事実上シボレーだけという状況になっていますが、例えばフランツ・エングストラー選手が優勝を飾って"おじさんパワー"を見せつけたり、一方では若手のドライバーもどんどん育ってきている感じがしています。将来に向けた新しい芽に注目するのも面白いでしょうね」





シボレーのチームメイト同士によるドライバーズタイトル争い、そしてベテランから若手までが入り乱れて激しく競い合っているYOKOHAMAトロフィーの行方。
日本ラウンド、「WTCC Race of JAPAN」は2011年のシーズンにおいて大きなポイントとなる一戦であり、初めてのコースを世界のトップドライバーたちがどう攻略してくるのかにも注目が集まる。
また、激しいバトルから格闘技的な要素の強いレースと言われているWTCCだが、より深く掘り下げてみていくと緻密な戦略やタイヤマネージメント、世界トップレベルのドライバーとチームによる頭脳戦であるというWTCCの真の姿も見えてくる。

10月22日の予選、そして23日の決勝レース、鈴鹿・東コースでADVANレーシングタイヤとそれぞれの選手たちがどのような戦いを演じてくれるのかが、今から楽しみなところだ。
 
 
[UPDATE : 7.Oct.2011]
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