TOP > Impression:01 自動車ジャーナリスト 河口まなぶ

トレードオフの関係にあるころがり抵抗とウェット性能を見事に両立させているところに、時代にマッチしたインテリジェンスを感じる。

Impressions:01 Yuji Naito

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「明らかに走り出しが軽やか(笑)」と河口まなぶ氏は開口一番、快活に笑う。試乗車両であるメルセデスベンツE250ステーションワゴンには、これまで千kmに及ぶロングドライブを含め、数々のシーンでステアリングを握ってきた。そのフィーリングが鮮明に残っている河口氏にして、この日のE250は新鮮なドライブ体験だと言うのだ。唯一の違いはADVAN dBを装着していること。サイズは225/55R16であり、これはノーマルタイヤと同一のもの。
「アクセルを踏むと軽やかにクルマが前に進む。ドイツ車にありがちな重々しさがすっかり影をひそめていますね」と第一印象から、ADVAN dBの美点である、ころがり抵抗の少なさを指摘する。

「低速域からの静粛性は、見事というほかにない」

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「信号で停まって発進するたびに明確な違いを感じます。それでは、少し遠出してみましょうか?」と河口氏は幹線道路にスルスルとE250を進めた。やや混雑した一般道を時速50 km/h程度で流しながら、しばし無言が続く。

「うん、低速域からの静粛性は見事というほかありませんね。僕らモータージャーナリストだけではなく、誰が聞いても静かとわかるレベルにまで抑えられています。そして、ここからがもっとも感心させられたポイントなのですが、静かなだけではなく音質がとても『やさしい』。耳に残らない。ただ単にデータ上で静かになっているのではなく、ドライバーや同乗者が聞いて心地よい音色に仕上がっています。」

今度は一般道から高速道路に入る。スピード域を上げたときの印象はどうだろう。
「高速道路では静粛性がさらに際立ちますね。路面の舗装によって変化するのは当然ですが、やはり静か。あくまで一般論ですが、ドイツ車は高級車であっても、静粛性にトッププライオリティを置いているとは言えない部分もあるのです。それよりも走行安定性や、直進安定性に重きを置いていたりする。これは優劣や善し悪しというより、哲学や環境の違いによるものなのですが、ADVAN dBが、そういったドイツ車のネガと捉えかねない部分を、巧みにフォローしている感じがします。」

そうこうしているうちに、曇り空から雨粒が落ちて路面を濡らし始めた。「この先のコーナーは滑りやすいですよ」とつぶやきつつ、河口氏は滑らかにステアリングを切り込んでいく。

「率直にいってウェット性能は期待以上ですね。これほどころがりが軽いタイヤだと、コーナリングでのグリップやウェット性能はそれほど期待できないという先入観があったのですが、良い意味で裏切られました(笑)。流行のエコカーは燃費や環境性能を優先しているので、装着しているタイヤはどれもころがり抵抗が少ない。それは当然としても、ウェット性能でもの足りなさを感じることがある。つまり、ころがり抵抗が少なくてウェット路面でも安心して運転できるのがADVAN dB。エコカーに乗っているオーナーにとっても、これはひとつの理想形と言えるのではないでしょうか。」

「ADVAN dBは、新しい存在。知性を感じますね」

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河口氏はひとつの結論を導き出した後、大きなカーブが連続するジャンクションを駆け抜けた。
「グリップやコーナリングについては、さすがADVANを冠するだけのことはあります。ただし、ハイグリップタイヤのようにGがグッと立ち上がるのではないところに好感がもてます。ステアリングを切り込んでいくと同時に自然にGが立ち上がっていくのは僕好み。スポーティというよりもしっかりしていて、しなやか!」
河口氏は、ADVAN dBのとてもナチュラルなハンドリングが気に入ったようだ。

「これまでたくさんのタイヤを試乗したり、体感してきましたが、ADVAN dBには知性を感じますね。あちらを立てればこちらが立たない…トレードオフの関係にある性能を見事に両立させているところに、時代にマッチしたインテリジェンスを感じるのです。あっ、無機質なタイヤのインプレに『知性』なんて言葉を使ったのは初めてのことです(笑)。でも、ADVAN dBはそれくらい新しい存在ですね。」

河口氏は言葉を選びながらインプレッションを締めくくると、「では、もう少し遠回りしてから帰りましょう!」と予定していたルートをそれた。いつまでも走っていたくなる、ADVAN dBのフィーリングを楽しむことにしたようだ。

小島幸裕 写真

河口まなぶ
自動車ジャーナリスト。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。1997年よりA.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。WEBや自動車専門誌などに執筆するかたわら、ドライビングレッスンやインストラクターも勤める。1970年生まれ。

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